デイジーチェーンとは?配線をスマートにする仕組み
2025.11.13 | DX, ディスプレイ運用, 利便性向上
サイネージを複数台設置する際に「デイジーチェーン(Daisy Chain)」という言葉を耳にすることがあります。
デイジーチェーンとは複数の機器を数珠つなぎのように直列で接続する方法です。
この記事では、デイジーチェーンの基本的な考え方から、メリット・デメリット、サイネージなどへの活用例までを解説します。

ショッピングセンターでのSamsungサイネージVideoWall製品使用イメージ
デイジーチェーンの基本構造
デイジーチェーンとは、1つの信号を、複数の機器に直列で渡していく接続方法です。一般的な接続方法では、STBからそれぞれのディスプレイにケーブルを1本ずつ引きますが、デイジーチェーンでは次のようにつなぎます。
STB → ディスプレイA → ディスプレイB → ディスプレイC
STBは起点となるディスプレイのみに接続し、AからB、BからCとケーブルで接続されるため、配線周りをシンプルにすることができます。一部の機種では、複数台のディスプレイをまとめて操作することも可能です。
ケーブル規格と種類
デイジーチェーンでは対応する規格やポートの種類が重要です。
DisplayPort (DP)
DisplayPort 1.2以降では、MST(1本のケーブルで複数のディスプレイに順番に同時に映像を送る仕組み)に対応しています。MST対応のディスプレイでは、1本のケーブルで複数のディスプレイに順番に映像を送信可能です。
仕様書への表記例
・DisplayPort Out / DP Out / DP MST Out:デイジーチェーン用の送信ポート
・DisplayPort In / DP In:入力ポート
DisplayPortのMST対応ディスプレイなら、1本のケーブルで複数のディスプレイに映像を流せるのが特徴です。
HDMI
HDMIは基本的にデイジーチェーン非対応ですが、一部の業務用サイネージでは“HDMI Loop-Out”機能を搭載しており、これを利用すれば同一映像を複数台に出力できます。
仕様書への表記例
・HDMI Out(daisy-chain)
・HDMI Loop-Out
USB-C
MST対応のUSB-Cポートを使用する場合、DisplayPortオルタネートモード(USBのケーブルで映像や音声などパソコンの画面信号を送れる仕組み)を介してデイジーチェーンが可能です。
仕様書への表記例
・USB-C DP Alt Mode Out
※MST対応のUSB-Cポートの場合のみ
Samsungのマルチディスプレイ Video Wallの場合は下記のようになります。
STB→HDMI→1号機→DP→2号機→DP→3号機・・・
活用シーン
商業施設などのマルチディスプレイでの活用
複数台のディスプレイで大画面を構成するマルチディスプレイでもデイジーチェーンが有効です。
6台で構成されたマルチディスプレイでも、コンテンツを出力するSTBが1台あれば6台全てに投影することができ、配線周りだけでなくSTBの導入台数を抑えることができます。
出力設定によっては1台ずつ異なるコンテンツ、または全画面を連動した画面にするなど、フレキシブルな運用が可能になります。
オフィスや学校でのマルチモニター環境
オフィスや学校などでも複数のディスプレイで同じ映像を流したい場合にも、デイジーチェーンで接続が有効です。複雑な分配器を用意する必要がないため、コストを抑えることができます。
デイジーチェーンのメリット
配線まわりがスッキリ
デイジーチェーンで接続すればケーブルの本数を減らすことができます。
1台ずつSTBの接続では、電源(ディスプレイ、STB)、ケーブルが増えると絡まりやすく、配線処理やメンテナンスでも手間が発生します。
デイジーチェーンで接続すれば最小限の配線で複数機器を制御できるため、見た目も機能もスマートに保てます。
出力ポートを最小限に
STBやPC側の映像出力端子は限られており、音声や操作系などで使用する可能性があります。
デイジーチェーンで接続すれば1つの出力ポートで複数台を駆動できるため、ポートを他の出力に使用することができます。
導入コストの削減
STBは1台に抑え、ケーブル類や分配器が不要になる分、初期導入コストを抑えられるのも大きなメリットです。サイネージなどで多数のディスプレイを扱う場合には、トータルで大きな費用削減効果があります。
デイジーチェーンのデメリット
中間機器の障害で全体が止まる
デイジーチェーンは信号を順番に送る構成のため、途中の機器が故障した場合、後続の機器にも映像が届かなくなる可能性があります。特に常時稼働が求められる場所では、冗長性の確保が重要になります。
ケーブルの長さ
ケーブルが長くなるほど信号劣化が起きやすく、解像度やリフレッシュレートにも制約が出ます。機器の対応仕様を確認した上で設計する必要があります。
対応規格の確認
ディスプレイにはデイジーチェーンに「対応」「非対応」の機種があります。また「送信側」「受信側」の両方の規格に対応しているか事前に確認が必要です。併せて適用できるケーブルの規格も事前確認を行います。
デイジーチェーンでの設置におけるコツ
設置レイアウト
映像信号を直列で送るため、物理的な配置順とケーブルの流れを揃えておくと、メンテナンスが容易になります。ケーブルの長さやルートを事前に設計しておくことが重要です。
不具合のリスクに備える
すべての画面が一括で落ちないよう、重要な表示にはバックアップ用の入力端子を活用したり、一定間隔で機器の状態を監視する仕組みを取り入れると安心です。
将来の設計
将来的にディスプレイを増やす予定がある場合は、余裕のあるポート数とケーブル長を確保しておきます。
初期設計の段階で将来の拡張を見据えることが、長期的なコスト最適化につながります。
デイジーチェーンでの設置におけるコツ
デイジーチェーンは、複数のディスプレイを接続して配線を簡素化し、出力ポートや導入コストを抑えつつ効率的に運用できる方式です。事前に設計と規格を確認すれば、安定した映像配信とスッキリした設置環境を両立できます。
Samsung製サイネージディスプレイのデイジーチェーン対応機種
Video Wall マルチディスプレイ
- VH55C-R
- https://ss.access-company.com/product/video-wall-vhc-r/
- VH55C-E
- https://ss.access-company.com/product/video-wall-vhc-e/
- VH46B-U
- https://ss.access-company.com/product/video-wall-vmb-u/
-
ストレッチ(横長)ディスプレイ